「ブラックホール」と聞くと、どれも同じような真っ黒な天体を思い浮かべるかもしれません。
しかし実際には、ブラックホールにも質量によっていくつかの種類があります。
太陽の数倍ほどの質量を持つものもあれば、太陽の数百万倍、数十億倍という巨大なものもあります。そして、その中間にあたるブラックホールも存在すると考えられています。
現在、天文学ではブラックホールを主に、
恒星質量ブラックホール
中間質量ブラックホール
超大質量ブラックホール
の3種類に分けています。
さらに、宇宙が誕生した直後に生まれたかもしれない「原始ブラックホール」という仮説上の存在も研究されています。
ブラックホールそのものの基本的な仕組みについては、「ブラックホールとは?光も脱出できない天体の仕組みをわかりやすく解説」で詳しく紹介しています。
では、それぞれ何が違うのでしょうか。
この記事では、ブラックホールの種類について次の点を整理します。
- 恒星質量ブラックホールとは何か
- 中間質量ブラックホールがなぜ重要なのか
- 超大質量ブラックホールはどこにあるのか
- 原始ブラックホールは観測済みの分類と何が違うのか
- ブラックホールの種類を調べると宇宙の何が分かるのか
ブラックホールは「大きさ」より質量で分ける
ブラックホールの種類を考えるとき、重要なのが質量です。
ここでよく使われるのが「太陽質量」という単位です。
太陽1個分の質量を1太陽質量として、
- 太陽10個分なら10太陽質量
- 太陽1000個分なら1000太陽質量
- 太陽100万個分なら100万太陽質量
というように比べます。
ただし、ブラックホールの種類を分ける境界に厳密な線があるわけではありません。
研究によって分類範囲が多少異なるため、「この質量を超えた瞬間に別の種類になる」というものではありません。
重要なのは、単に重さが違うだけではなく、どのように生まれたのか、宇宙のどこに存在するのかという点にも違いがあることです。
恒星から生まれる「恒星質量ブラックホール」
最もよく知られているのが、恒星質量ブラックホールです。
名前のとおり、重い恒星が一生を終える過程で作られるブラックホールです。
恒星は内部で核融合を行い、そのエネルギーによって自分自身の重力に耐えています。ところが燃料を使い果たすと、その支えが弱くなります。
十分に重い恒星では中心部が急激に収縮し、最終的にブラックホールになる場合があります。
生まれたブラックホールは数太陽質量から数十太陽質量程度のものが多く、条件によっては100太陽質量を超えるものも考えられています。
ブラックホールそのものは光を出しません。
そのため、近くの恒星からガスを取り込むときに出るX線や、ブラックホール同士が合体したときの重力波などから発見されています。
銀河の中心にいる「超大質量ブラックホール」
恒星質量ブラックホールとは桁違いに巨大なのが、超大質量ブラックホールです。
太陽の数十万倍から数十億倍もの質量を持つブラックホールが知られています。
そして、大きな銀河のほとんどの中心には、超大質量ブラックホールが存在すると考えられています。
私たちの天の川銀河の中心にもあります。
それがいて座A*です。
いて座A*の質量は、太陽のおよそ400万倍です。これだけ巨大でも、超大質量ブラックホールの中では比較的小さい部類です。
いて座A*については、「いて座A*(エースター)とは?天の川銀河の中心にある巨大ブラックホールをわかりやすく解説」で詳しく解説しています。
ほかの銀河では、太陽の数十億倍というブラックホールも見つかっています。
では、なぜ銀河の中心にこれほど巨大なブラックホールが存在するのでしょうか。
実は、ここにはまだ大きな謎があります。
超大質量ブラックホールはどうやって巨大になった?
恒星質量ブラックホールなら、重い恒星の最期から作られるという基本的な仕組みを考えることができます。
ところが超大質量ブラックホールになると、話は簡単ではありません。
ブラックホールは周囲のガスや星を取り込んだり、ほかのブラックホールと合体したりすることで成長できます。
それなら、小さなブラックホールが少しずつ大きくなったのでしょうか。
問題は、宇宙がまだ若かった時代にも、すでに非常に巨大なブラックホールが存在していたことです。
普通の恒星からできたブラックホールが少しずつ成長しただけでは、十分な大きさになる時間が足りない可能性があります。
そこで、
- 宇宙初期の非常に重い星から大きなブラックホールが生まれた
- 巨大なガス雲が直接つぶれてブラックホールになった
- 小さなブラックホールが短期間に急速成長した
など、いくつもの経路が研究されています。
しかし、実際にどの方法がどれくらい重要だったのかは、まだ分かっていません。
その間にいる「中間質量ブラックホール」
ここで不思議なことがあります。
恒星質量ブラックホールは見つかっています。
超大質量ブラックホールも見つかっています。
では、その中間はどうなっているのでしょうか。
そこで研究されているのが、中間質量ブラックホールです。
おおむね太陽の100倍から数十万倍程度の質量を持つブラックホールが、この分類に含まれます。
ただし、恒星質量・中間質量・超大質量の境界は厳密に決まっているわけではなく、研究によって範囲が異なる場合があります。
中間質量ブラックホールは、
恒星質量ブラックホールと超大質量ブラックホールをつなぐ「ミッシングリンク」
とも呼ばれます。
もし中間質量ブラックホールがどのように生まれ、どこに存在しているのかが分かれば、超大質量ブラックホールが成長した過程を知る重要な手掛かりになる可能性があります。
ところが、この中間サイズのブラックホールは見つけにくく、恒星質量や超大質量ブラックホールほど多くの確実な例が知られているわけではありません。
星の動きから見つかった中間質量ブラックホールの強い証拠
中間質量ブラックホールを探す方法の一つが、周囲の星の動きを調べることです。
2024年には、ハッブル宇宙望遠鏡の観測から、球状星団「オメガ・ケンタウリ」の中心に中間質量ブラックホールが存在することを示す強い証拠が報告されました。
研究チームは、20年以上にわたるハッブルの画像を使って星の動きを調べました。
すると、星団の中心付近で非常に高速に動く7個の星が見つかりました。
それらの星を重力でつなぎ止めるためには、中心に大きな見えない質量が必要です。
研究チームは、その有力な説明として、少なくとも太陽の約8200倍の質量を持つブラックホールを挙げています。
これは中間質量ブラックホールの存在を支持する非常に強い証拠です。
ただし、この質量帯のブラックホールが宇宙にどれくらい存在し、どのように形成されるのかは現在もよく分かっていません。
中間質量ブラックホールの研究は、「超大質量ブラックホールがどこから来たのか」という謎を解くうえでも重要なのです。
もう一つの候補「原始ブラックホール」
ブラックホールには、さらに変わった候補があります。
それが原始ブラックホールです。
恒星質量ブラックホールは恒星が崩壊してできます。
ところが原始ブラックホールは、恒星から生まれるものではありません。
宇宙が誕生して間もないころ、非常に密度の高い領域が直接つぶれてブラックホールになったのではないか、という仮説です。
もし存在するなら、その質量は非常に小さなものから大きなものまで、幅広かった可能性があります。
原始ブラックホールは、暗黒物質の正体を説明する候補の一つとしても研究されています。
しかし、2026年現在、原始ブラックホールが実際に存在すると確認されたわけではありません。
そのため、恒星質量・中間質量・超大質量ブラックホールと同じような「観測済みの分類」とは分けて考える必要があります。
3種類を比べるとどう違う?
大まかに整理すると、次のようになります。
| 種類 | おおよその質量 | 主なでき方・候補 | 主な場所・特徴 |
|---|---|---|---|
| 恒星質量ブラックホール | 太陽の数倍~数十倍以上 | 重い恒星の最期に形成 | 連星系や重力波で観測される |
| 中間質量ブラックホール | 太陽の約100~数十万倍程度 | 星団内での合体・成長などが候補 | 星団などで探索が進む |
| 超大質量ブラックホール | 太陽の数十万~数十億倍 | ガスの取り込み、合体、直接崩壊などが候補 | 大きな銀河の中心に存在 |
| 原始ブラックホール | 幅広い質量が理論上可能 | 宇宙初期の高密度領域から形成したという仮説 | 存在未確認。暗黒物質候補として研究 |
ただし、この表の数字は厳密な境界ではありません。
研究によって分類範囲が重なることもあります。
ブラックホールの種類は、宇宙に存在するブラックホールを、その質量や形成過程から理解しやすくするための大まかな分類と考えるとよいでしょう。
ブラックホールの種類を調べると、宇宙の歴史が見えてくる
ブラックホールの種類を分けるのは、単に大きさを分類するためではありません。
恒星質量ブラックホールを調べれば、重い星がどのように一生を終えるのかが分かります。
中間質量ブラックホールを調べれば、小さなブラックホールから超大質量ブラックホールへ成長する過程を知る手掛かりになるかもしれません。
そして超大質量ブラックホールを調べることは、銀河そのものがどのように成長してきたのかを理解することにもつながります。
恒星の最期から生まれる比較的小さなブラックホール。
銀河の中心に存在する巨大なブラックホール。
その間をつなぐ存在は、どのように生まれたのでしょうか。
ブラックホールの「種類」を調べることは、宇宙が現在の姿になるまでの歴史を調べることでもあるのです。
情報源・参考資料
- NASA Science「Types of Black Holes」
- NASA Hubble「Hubble Black Holes」
- NASA「Hubble Finds Strong Evidence for Intermediate-Mass Black Hole in Omega Centauri」
- Häberle et al., “Fast-moving stars around an intermediate-mass black hole in ω Centauri”, Nature 631, 285–288 (2024)
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