京都の寺社庭園がカエルの「小さなすみか」に 環境DNAで見えた都市の生態系

2026年8月21日、京都大学の研究チームは、京都市東山地区にある寺院や神社の庭園が、都市に暮らす両生類の生息地として機能していることを明らかにしたと発表しました。

目で探す調査に加えて、水の中に残った生き物のDNAを調べる「環境DNA分析」を組み合わせることで、庭園の水辺に複数種のカエルやイモリが生息していることが分かりました。

今回の研究で注目されたのは、寺社の庭園が景観や文化財としてだけでなく、都市の中で両生類を支える「小さなすみか」になっている可能性です。

都市化が進むと、カエルやイモリのような両生類は暮らせる場所を失いやすくなります。しかし、人が管理している池や流れのような小さな水辺が、生き物の生息地として役立っていることが見えてきました。

目次

なぜ寺社の庭園に注目したの?

カエルやイモリは、水辺や湿った環境に強く依存する生き物です。

ところが都市では、宅地化や道路整備などによって池や草地、林などが減り、生息地が分断されやすくなります。

一方、京都の寺院や神社の庭園には、池や流れ、湧水などを含む水辺が今も多く残っています。

これらは主に文化的な景観として維持されてきましたが、研究チームは「こうした水辺が都市の両生類のすみかになっているのではないか」と考え、詳しく調べました。

31施設・80か所の水辺を調査

研究チームは、京都市東山地区にある31の寺院・神社と関連施設を対象に、80か所の水辺で調査を行いました。

目視調査では、成体のカエルだけでなく、卵やオタマジャクシも確認し、鳴き声も手がかりにして種を特定しました。

さらに、43か所の水辺では環境DNA分析も行っています。

研究では、水辺の種類や水源、水の流れ、森林までの距離、水辺の構造、コイの有無なども記録し、それぞれの種がどのような環境と関係しているのかを調べました。

そもそも「環境DNA」とは?

環境DNAとは、生き物が水中に残した皮膚の細胞や粘液などに含まれるDNAを調べ、「そこにどんな生き物がいたか」を推定する方法です。

例えば、池の水を少量採取してDNAを分析すると、カエルそのものを捕まえたり、姿を直接見つけたりしなくても、その種がいた可能性を調べられます。

カエルの中には夜に活動する種や、季節によって見つけにくくなる種もいます。

そのため、目で探すだけでは見逃してしまう生き物を調べる方法として、環境DNAが役立ちます。

ただし、環境DNAだけですべてが分かるわけではありません。

「そこで繁殖しているのか」「卵や幼生がいるのか」といったことは、実際に観察しなければ分からない場合があります。

今回の研究でも、環境DNAと目視調査の両方を組み合わせています。

在来6種・外来1種のカエルとイモリ1種を確認

調査の結果、研究チームは、京都の庭園にカエル7種(在来6種・外来1種)とイモリ1種が生息していることを確認しました。

また、種ごとに関係する環境条件が異なることも分かりました。

特に興味深いのが、調査方法による違いです。

タゴガエル(Rana tagoi)は環境DNAによってのみ確認されました。

一方で、カエルがその場所で繁殖しているかどうかを確かめるには、卵やオタマジャクシを直接確認することが重要でした。

つまり今回の研究では、環境DNAで見つけにくい種を探すことと、直接観察で繁殖などを確かめることを組み合わせるのが有効だと示されています。

寺社庭園は「文化」と「生き物」が重なる場所

寺社の庭園は、長い間、人の手によって管理されてきた場所です。

自然保護というと、人の手が入っていない森や川をイメージするかもしれません。

しかし今回の研究は、人が文化的な景観として維持してきた水辺も、都市の生き物を支える生息地として機能していることを示しました。

研究チームは、このように文化と生物多様性が重なる場所を「生物文化的な水辺景観」として捉えています。

歴史的な庭園を守ることが、結果としてカエルやイモリなどの生息場所を残すことにもつながっている可能性があります。

学校や公園の池にも生かせる?

今回の研究結果は、寺社だけに関係するものではありません。

都市には学校や公園、住宅地などにも小さな池や水辺があります。

こうした場所も、管理方法によっては両生類などの生息地として役立つ可能性があります。

例えば、水辺の植物をどの程度残すのか、水の流れをどう維持するのか、外来種をどのように管理するのかによって、生き物の暮らしやすさは変わるかもしれません。

研究チームは今後、庭園の所有者や管理者とも協力しながら、文化遺産と生物多様性の両方を大切にする水辺管理の方法を考えていきたいとしています。

まとめ

京都大学の研究チームは、京都市東山地区の寺院や神社などにある水辺を調べ、寺社庭園の水辺が都市の両生類を支える生息地として機能していることを示しました。

31施設・80か所の水辺で目視などによる調査を行い、そのうち43か所では環境DNA分析も実施しました。

その結果、在来6種・外来1種のカエルと、イモリ1種が確認されています。

さらに、環境DNAではタゴガエルのような直接見つけにくい種を検出できる一方、繁殖を確認するには卵やオタマジャクシを実際に観察することも重要だと分かりました。

今回の研究は、寺社庭園が文化的な景観としてだけでなく、都市の生物多様性を支える小さな水辺としても価値を持っていることを示しています。

普段は静かな庭園として見ている場所にも、カエルやイモリが暮らす小さな生態系が広がっているのです。

情報源・参考資料

  • 京都大学大学院地球環境学堂「Kyoto’s gardens provide habitats for local amphibians」(2026年8月21日)
  • Kae Okoshi et al., Anurans in culturally managed temple and shrine waterscapes in Kyoto: integrated visual, acoustic, and environmental DNA surveys, Urban Ecosystems(2026年)
  • DOI:10.1007/s11252-026-02090-5
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