NEDOが5つの新しい研究を始める
NEDOは2026年8月17日、浮体式洋上風力発電をもっと安く使えるようにするための5つの研究テーマを採択したと発表しました。
NEDOは、新しいエネルギー技術などの開発を支援している国の研究開発機関です。
今回の研究期間は、2026年度から2027年度までの予定です。
研究するのは、風車の羽根や発電機だけではありません。
たとえば、
- 海に浮かぶ土台をどう作るか
- 風車が流されないようにどう固定するか
- 海の中にある設備をどう点検するか
- 壊れた風車をどう修理するか
- 大きな設備をどうやってたくさん作るか
といった部分も研究します。
少し意外かもしれませんが、風力発電を広く使うためには、発電する部分以外の技術もとても大切なのです。
そもそも「浮体式洋上風力」って何?
洋上風力発電とは、海の上に風車を設置して電気を作る方法です。
大きく分けると、2つの方式があります。
1つは着床式です。
これは、風車を支える土台を海底に固定します。水深が比較的浅い場所に向いています。
もう1つが、今回のテーマになっている浮体式です。
こちらは、風車を大きな浮きのような構造物の上に載せて、海に浮かべます。
もちろん、ただ浮かべているだけでは流されてしまいます。そこで、太いロープやチェーンのような設備を使い、海底につなぎ止めます。
こうした設備を係留設備と呼びます。
日本のまわりの海は、岸から少し離れると水深が急に深くなる場所が多くあります。
そのため、海底に土台を作る着床式だけでは、風車を設置できる場所が限られます。
そこで期待されているのが、深い海でも使いやすい浮体式なのです。

でも、海に浮かべるだけではうまくいかない
ここで大切なのは、「海に風車を浮かべられる」ことと、「安く大量に電気を作れる」ことは別だという点です。
海の上では、強い風が吹きます。大きな波もあります。
塩分を含んだ海水も、金属などを傷めます。
しかも、設備が壊れたからといって、陸上の機械のように簡単に修理へ行くことはできません。
つまり、作る、海へ運ぶ、設置する、点検する、修理する、という一連の作業すべてを考えなければなりません。
今回採択された5つの研究は、こうした問題を少しずつ解決しようとしています。

1.風車をできるだけ揺れにくくする
1つ目は、TLP型と呼ばれる浮体の研究です。
TLPは、海に浮かぶ土台を、強く張った係留ラインで海底につなぐ方式です。
イメージとしては、風船をひもで下から強く引っ張って、動きにくくしているようなものです。
海に浮いているので多少は動きますが、上下の動きや傾きを小さくできます。
今回の研究では、海底につなぐ部分の設計、深い海での固定方法、接続部分の耐久性などを調べます。
将来は、1MW級の風車を載せた浮体を実際の海で試すことも考えられています。
ただし、これはまだ実用化されたという意味ではありません。
まずは、実際の海で試せるところまで技術を高めようとしている段階です。
2.海の中のケーブルをセンサーで見守る
浮体式の風車は、係留設備を使って海底につなぎ止めます。
ところが、この設備には困ったことがあります。海の中にあるので、簡単には点検できないのです。
そこで研究するのが、光ファイバーを使って設備の状態を見守る技術です。
ケーブルの中にある光の変化を利用すると、設備にどのくらい力がかかっているかなどを調べられる可能性があります。
もし異常を早く見つけられれば、大きな故障になる前に修理できるかもしれません。
点検のために船を何度も出す回数も減らせれば、保守にかかる費用を下げられる可能性があります。
3.巨大なコンクリート製の浮体を作る
3つ目は、コンクリートを使った浮体の研究です。
今回の計画では、15MW級という非常に大きな風車を想定しています。
風車が大きくなれば、それを支える浮体も巨大になります。
ここで問題になるのが、「大きなコンクリート構造物を、毎回同じ品質で作れるのか」ということです。
さらに、海水に含まれる塩分や、波による繰り返しの力にも長期間耐えなければなりません。
そこで、光ファイバーなどを使って、コンクリートにひびが入っていないか調べる技術も研究します。
将来的には商用化を目指していますが、今回の研究だけで商用化が決まったわけではありません。
まずは、大きな浮体を安全に作れるかどうかを確かめる段階です。
4.壊れた風車を海の上で修理する
風車も機械なので、長く使えば故障することがあります。
大きな故障が起きた場合、風車を浮体ごと港まで運んで修理する方法があります。
しかし、海底につないでいる設備を外し、海底ケーブルも処理し、巨大な風車を港まで運ぶとなれば、大変な作業です。
そこで考えられているのが、風車を海に浮かべたまま修理する方法です。
今回の研究では、風車のタワーを使って大きなクレーンを設置し、海上で大型部品を交換できないか検討します。
もし実用化できれば、毎回風車を港へ運ぶ必要が減るかもしれません。
ただし、この方法もまだ実用化前です。
5.浮体を「大きな部品」に分けて作る
最後は、浮体の作り方そのものを工夫する研究です。
巨大な浮体を最初から1つの大きな構造物として作ると、とても広い工場や港が必要になります。
そこで、いくつかの大きな部品に分けて作り、最後に港で組み立てるという方法を研究します。
これは、家具を小さな部品で運び、家で組み立てるのと少し似ています。
この方法がうまくいけば、大きな設備を作れる港だけに頼らず、より多くの場所で浮体を組み立てられる可能性があります。
また、同じ形の部品を工場でたくさん作れるようになれば、量産もしやすくなります。
「5つの技術が完成した」というニュースではない
ここは、今回の記事で特に大切なところです。
NEDOが5つの研究を採択したからといって、浮体式洋上風力がもう安くなったわけではありません。
新しい風力発電所がすぐに建つという意味でもありません。
今回の研究では、この方法は本当に作れるのか、安全に使えるのか、壊れにくいのか、今より安くできるのか、といったことを確かめます。
つまり、まだ技術を確かめる段階です。
今後さらに実際の海で試験し、その結果が良ければ、より大きな実証や商用化へ進んでいきます。
なぜ風車以外の部分まで研究するの?
風力発電というと、大きな羽根が回っている姿を思い浮かべる人が多いと思います。
でも、実際に電気を安く作るためには、風車だけ良くしても十分ではありません。
土台、点検、修理、量産方法まで含めて、「風車を社会で使い続けるための技術」が必要です。
ここが今回のニュースの一番大きなポイントです。

日本にとってなぜ重要なのか
日本は海に囲まれています。
ところが、日本の近くの海は深い場所が多く、海底に直接固定する着床式だけでは使える場所が限られます。
浮体式なら、より深い場所にも風車を設置できる可能性があります。
ただし、技術的に作れるだけでは十分ではありません。
安全に使えて、長持ちして、しかもなるべく安く作れることが重要になります。
今回の5つの研究は、そのための技術を一つずつ確かめる取り組みです。
まとめ
- NEDOが浮体式洋上風力に関する5つの研究を採択した
- 風車だけでなく、浮体、係留設備、点検、修理、量産方法などを研究する
- 日本は水深の深い海が多いため、浮体式が重要になる可能性がある
- 今回はまだ技術を確かめる段階
- すでに低コスト化や商用化が実現したわけではない
- 今後は実際の海で安全性や費用を確かめられるかが重要になる
浮体式洋上風力を広く使うためには、ただ海に風車を浮かべればよいわけではありません。
作るところから、設置、点検、修理まで。
発電所を長く使い続けるための仕組み全体を、少しずつ安くしていく必要があります。
今回NEDOが採択した5つの研究は、そのための一歩です。
